セミナーレポート
主催:デュポン ニュートリション&バイオサイエンス
より充実したシニアライフを送るための食品・飲料開発
11月21日に開催された「より充実したシニアライフを送るための⾷品・飲料開発」についてその模様をレポートします。
このセミナーではそれぞれの専門家によって、日本のシニア層の消費傾向、シニアに必要な栄養、シニア向け食品のテクスチャーに関する研究結果、シニアの消費者像について解説され、120名以上の業界関係者の方々が出席しました。
第1部では、デュポン ニュートリション&バイオサイエンス マーケティングマネージャー 市川卓氏よりシニア市場の消費者傾向について解説がありました。
デュポンが独自に行った消費者調査によると、シニアは年齢があがるにつれて自身のことを健康だと感じる割合が増加し、とりわけ55歳以降から男女ともに運動をする割合が増えていることなど、シニアの健康意識について解説されました。しかし、加齢に伴う体力の衰えは避けられない課題であり、40代から始まるともいわれる嚥下力の低下は、自身では健康だと感じているため自覚しにくく、将来的に誤嚥性肺炎などを起こすきっかけになる可能性があることについて強調しました。フレイル(虚弱)という観点では、体力面の低下に加えて定年退職や子供の独立などの環境的要因、それに伴う心理的要因によるシニアならではの感情起伏があり、うつなどにも注意が必要になると述べました。シニアの身体機能の低下と心理変化を踏まえてより良いシニアライフをサポートする食品開発を進め、いままでの高齢者食や病院・介護食と、一般食品の間をつなぐ食品開発が求められていると締めくくりました。
第2部では、武庫川⼥⼦⼤学 ⽣活環境学部 ⾬海照祥教授よりシニアに求められる栄養と課題についてお話いただきました。
令和元年以降の人口動態は、65~74歳よりも、75歳以上の人口の方が多いという「令和型 超高齢化社会」となっている状況について触れ、高齢者の筋肉、骨密度、免疫機能は低下、脂肪、コレステロール値などは増加し、さらに臓器の機能も低下していくことを解説されました。
次にサルコペニアとフレイルの判断基準について述べ、フレイルにはサルコペニアなどの身体的なフレイルだけでなく、認知症やうつなどの心理的フレイル、一人暮らしなどで人と話さないような社会的フレイルとがあると述べられました。また、たん白摂取量が少ないとフレイルリスクが高いことそして、生活習慣病にはフレイルの合併率が高いことからも、フレイル予防の重要性について強調されました。
第3部では、デュポン ニュートリション&バイオサイエンス リージョナルプロダクトマネージャー 加藤和⼦氏よりシニア食品開発におけるテクスチャーの考え方について解説されました。筋力の低下に伴う高齢者の嚥下機能の低下について、そして考えられる安全な嚥下のテクスチャーについての解説と嚥下補助のとろみ剤についての変遷と今後の期待と展望について触れられました。とろみ剤の第1世代は澱粉、第2世代は澱粉とグアガムなどの混合品、そして、現在の第3世代ではキサンタンガムが主流となっていると解説されました。さらに今後は、新たな素材を用いた第4世代のとろみ剤開発が予測されることを示唆し、その上で、増粘多糖類の種類と素材特性によって、たとえ同じ粘度設計であってもテクスチャーが変わることをデータと共に解説され、その選択の難しさや検討すべきポイントについても説明されました。
また、食品の選択には気分が関与すること、食品が気分を変化させることについて触れ、製品のテクスチャーもまた、食品選択に影響を与える要素であるとお話されました。そのため、レオロジーとセンサリーの関係性についての理解を深めることは製品設計において重要であり、デュポン社で実施している評価事例について解説されました。シニア層に向けては、感情的ニーズ、嚥下の低下におけるニーズ、また栄養ニーズを踏まえた開発が重要になることを示唆されました。
第4部では世代・トレンド評論家/経営学修⼠(MBA)、インフィニティ代表取締役の⽜窪恵氏より、「アクティブシニアの消費者像と令和のシニアトレンド」と題した講演を行われました。牛窪氏は、現代の60代の9割はシニアと呼ばれたくないと思っていること、自身が「シニアである」という認識は年々減少していること、約4割がスマホを持ち、AmazonやYoutubeなども7割以上が利用し、デジタルメディアにも明るい60代以上の消費インパクトが以前にも増して大きいことについて言及されました。2025年には団塊世代が後期高齢者となるため、介護が社会的課題となり、政府としては在宅介護を推進していること、また、日本の労働人口が足りなくなっていく社会において、よりいっそう高齢者の健康が重要となるということを強調されました。ミドルシニアともいえるバブル世代(現49~60歳)では高度経済成長期やバブル期を過ごしており積極的な消費の傾向にあることを世代マーケティングの観点から解説され、ひとり親と子の世帯(オトナパラサイト)の増加も予測されることから、さらに消費意欲の高いシニアのおひとり様が増えていくことについても言及されました。牛窪氏は、『これからの消費の主役はアクティブシニアである』とお話を締めくくられました。
今回のセミナーでは、シニアという観点から栄養、マーケティング、そして適した食品のテクスチャーまでの内容を各講師の先生方よりご講演され、アンケート結果でも好評を博すことが出来ました。高齢化が加速する中、シニア向けの食品開発はより重要となると予測されます。当社では引き続きこのようなセミナーを開催してまいりますので、是非ご期待ください。